ペット爬虫類の魅力が少しずつ認知され始め、間口も広くなってきました。それに連れて飼育者も徐々に増えつつあります。
ですが、野生で暮らす爬虫類の生活環境を人工的に再現するには、勉強と投資が必要になります。知識の不足からくる不適切な飼育は、様々な病気の元となります。
誤った飼育習慣から発生する代表的な病気の一つが代謝性骨疾患(MBD)。体内に吸収するカルシウムが不足することで、骨の異常形成や低カルシウム症を引き起こします。
今回は、この代謝性骨疾患がテーマです。
- 代謝性骨疾患とは
- どんな場合に発症するのか
- 予防方法が知りたい
こういった内容を取り上げます。
重篤化すると命に関わる病気ですが、知識をつけ適切な飼育を行うことにより予防できます。一緒に勉強していきましょう。
代謝性骨疾患とはどんな病気なのか
代謝性骨疾患は、様々な理由により体内のカルシウムが不足して起こる病気です。爬虫類の体は血中のカルシウム濃度が低下すると、骨からカルシウムを放出して不足分を補います。骨から放出した分のカルシウムを正常に再供給できない場合、骨が脆くなって簡単に骨折したり、異常形成を起こして骨格が隆起するなど異常が発生します。
主な症状
代謝性骨疾患(MBD)の代表的な症状は以下の通りです。
- 骨の隆起や骨密度の低下・骨格の異常形成
- 骨の軟化による骨折
- 低カルシウム症による麻痺・痙攣などの神経障害
- カメの場合は甲羅の発育不全など
参考:フトアゴヒゲトカゲのクル病(代謝性骨疾患)|もねペットクリニック
参考:ヒョウモントカゲモドキの代謝性骨疾患(強直性痙攣伴う)|もねペットクリニック
代謝性骨疾患の原因
代謝性骨疾患を発症する原因は大きく分けて三種類あります。
- 必要な栄養素(主にビタミンD3・カルシウム)の欠乏
- 紫外線不足
- リンの過剰摂取
それぞれ詳細を解説します。
栄養素の欠乏
爬虫類がカルシウムを体内に吸収するには、カルシウムの他にビタミンD3が必要です。このどちらかが不足すると、代謝性骨疾患を引き起こす原因となります。
カルシウムの欠乏
カルシウムの供給が足りない場合や、何らかの事情でカルシウムの消費が激しい場合、体内のカルシウムが不足します。考えられるのは以下のような理由です。
- カルシウムの少ない餌をメインに与えている
- カルシウムパウダーを添加していない
- 卵がありカルシウムの要求量が増大している
こういったケースでは体内に取り込むカルシウムそのものが足りていないので、餌の内容や量を再検討する必要があります。
ビタミンD3の欠乏
ビタミンD3は、体内でカルシウムとたんぱく質を結合させてカルシウムの吸収を助ける働きをします。不足するとカルシウムを摂取していても体内に吸収できず、代謝性骨疾患の原因となります。
爬虫類が食べられる食品でビタミンD3を含むものは少なく、餌から摂取することが難しいです。ビタミンD3を取り込む方法は、一般的に以下の二種類です。
- 紫外線を浴びることで体内で生成する
- サプリメントを使用する
昼行性の種であれば日光浴を行うこと、夜行性の種は定期的にサプリメントを添加することで防止が可能です。逆に、意識して取り込ませないと不足しがちな栄養素であると言えます。
参考:自然と癒しの専門店 チャーム|爬虫類用サプリメント大百科
参考:公益財団法人骨粗鬆症財団 |ビタミンDを多く含む食品
紫外線不足
昼行性爬虫類は、紫外線を浴びることで体内でビタミンD3を生成します。そのため紫外線の不足は代謝性骨疾患の原因の一つです。昼行性のトカゲやカメの多くは、程度の差こそあれ紫外線が必要で、不足するとカルシウムをうまく吸収できなくなります。
リンの過剰摂取
リンは健康の維持に不可欠な栄養素ですが、カルシウムの吸収を妨げる働きがあるため、カルシウムに対してリンが多すぎると代謝性骨疾患の原因となります。
カルシウムとリンの適切な比率は種によって異なります。一般的に、カルシウムとリンの比率(Ca:P率)は
- 肉食・昆虫食で1:1〜2:1
- リクガメの場合は4:1〜6:1
が基準と言われています。そのため
- 草食性爬虫類に肉食用のフードを与える
- 肉食・昆虫食の種を精肉だけで育てる
- ガットロードやカルシウムの添加を行わず昆虫を与える
こうした給餌を長期間行なうと、理想的な栄養バランスから逸脱し代謝性骨疾患を引き起こす危険が高まります。
代謝性骨疾患の予防
恐ろしい病である代謝性骨疾患ですが、栄養バランスに注意し、適切な飼育環境を整えることで予防が可能です。
日光浴を適切に行う
昼行性爬虫類のケージには、紫外線ライトを設置するようにします。
紫外線ライトであれば何でもいいわけではなく、それぞれに合った強さのものを選ぶことが必要です。例えば、フトアゴヒゲトカゲなど砂漠に住む種に熱帯用のランプを照射しても、十分な強さではありません。
紫外線ライトには、それぞれ紫外線の強さがUVB100や150と記載されているので、その数値を基準に選びます。家の子にあった紫外線の強さが不明な場合は購入したショップに確認を取りましょう。
紫外線ライトの寿命にも要注意です。紫外線ライトの寿命は最長でも6ヶ月程度。それ以上の使用は、点灯はできても紫外線が弱くなる可能性があるので、定期的に買い替えましょう。
ビタミンD3を与える
夜行性の爬虫類は日光浴をしませんので、サプリメントを使って添加を行います。市販のビタミンD3入りのカルシウムパウダーを使用可能です。
カルシウムの欠乏に注意する
草食性の爬虫類には、小松菜などカルシウムを多く含む葉野菜を意識して与えましょう。カルシウムパウダーによるカルシウムの添加も行います。
餌昆虫は、基本的にどの種類もカルシウムよりリンを多く含んでいます。カルシウムパウダーによって栄養バランスを整えることが必須ですので忘れないようにしましょう。
肉食爬虫類の場合は、マウスやウズラなどを丸ごと与えると骨からカルシウムを摂取できます。精肉を与えることも可能ですが、リンとカルシウムのバランスには気を配ってください。
抱卵中の個体の給餌に注意
卵を持っている生体の場合、体内で卵殻を形成するためカルシウムの要求量が増大します。より注意深く観察を行い、栄養が不足しないよう用心しましょう。
まとめ
以上、代謝性骨疾患の原因と予防について紹介しました。
代謝性骨疾患は、時には生体の命に関わる病気ですが、飼育方法を見直すことで予防が可能です。
バランスの取れた食事と適切な日光浴は、爬虫類達の健康な暮らしに不可欠なものです。もし今回の記事を読んで不安な点があれば、一度餌や飼育環境を見直してみてください。
ライター:いちはら まきを
Twitter:@IchiharaMakiwo