基礎知識

爬虫類・両生類の脱走対策と対処法

爬虫類を飼育していると、過去に脱走や脱走未遂の経験のある方は多いのではないでしょうか。脱走は生体の命に関わることもあります。防止するのは飼い主の責任です。

とはいえ、爬虫類達はその多くが脱走の名人です。注意して取り扱っていても、予想の遥か斜め上を行き逃亡することもままありますよね。

今回のテーマは、爬虫類・両生類の脱走対策です。

  • 脱走の特徴を種類別に解説
  • 脱走防止のためにどんな点に注意すれば良いか
  • 万が一脱走された場合はどうすればいいか

こういった内容をお送りします。

 

種類別脱走の特徴

まずは、爬虫類・両生類の脱走について、以下の順で種類別に特徴をご紹介します。

  • 地表性ヤモリ・トカゲ
  • ヘビ
  • カメ
  • 壁ちょろヤモリ・樹上性トカゲ
  • イモリ・サラマンダー・カエル

それぞれどんなところから脱走しているのでしょうか。

地表性ヤモリ・トカゲ

地表性のため立体活動は苦手かと思いきや、以外に力が強くアクティブに動くのがこのグループです。

足が短いため、一見脱走には不向きに思えますよね。しかし、後ろ足で立ち上がった時に肩が出る程度の高さなら、ケージのへりに爪をかけてあっさりと乗り越えてしまいます。

ツルツルした壁は登れないため、生体の全長より高さのあるケージで飼育するか、蓋の閉め忘れ防止を徹底するのが有効です。大型種の場合は全長より高いケージを用意するのは難しいので、上が開かない前開きタイプのケージを利用すると良いでしょう。

ヘビ

ヘビは爬虫類界きっての脱走の達人です。

全身運動で移動する生き物なので、特に足がかりのないケージでもあっさり登頂してしまいます。また狭い隙間も利用するので「このくらい大丈夫だろう」と思っていた場所から逃走するケースも。力も強く、プラケースの蓋をこじ開けて逃げることもあります。

ヘビの脱走対策は、丈夫なケージの使用と施錠の二つが有効です。

小さい種やベビーであればプラケースでの飼育も可能ですが、成長に伴い力が強くなってきます。その際は改めて爬虫類専用ケージを用意し、鍵をかけて飼育すると安心です。

爬虫類ケージでは、GEXのエキゾテラシリーズや三晃商会のパンテオンシリーズが施錠可能なタイプです。ヘビの引越しを考えている方は検討してみてください。

カメ

カメも甘く見ていると脱走される種の一つです。運動能力が高く、爪をかけられる壁ならぐんぐん登ります。

カメ類で特に注意すべきなのは屋外でのバスキング中の脱走です。カメの歩み、などと足の遅さを揶揄されますが、その実カメは意外と動きが素早い生き物。ちょっと目を離した隙に逃走し、行方不明になるケースが見られます。自然光で日光浴させてあげたい、という思いやりが裏目に出てしまうため要注意です。

カメ類の脱走対策は、全長より高さのあるケージで飼育し、外での日光浴では目を離さないことです。蓋のない水槽やトロ舟で飼育する場合は、カメが直立して手を伸ばした長さよりも壁の高いものを使用して下さい。

壁ちょろヤモリ・樹上性トカゲ

ケージの隙間や扉の閉め忘れでの脱走が散見されるのがこのグループです。

特に壁ちょろヤモリは動きが素早く、ジャンプ力も高いです。メンテナンス中の逃走や、ハンドリング中の大ジャンプからの失踪には十分注意してください。

樹上性トカゲを鳥用ケージで飼育している場合、隙間からの脱走に注意してください。体の小さな個体は柵の間をすり抜ける可能性があります。力が強く、立体活動も得意なので、屋外に逃走されると捕獲は困難です。

イモリ・サラマンダー・カエル

このグループの最大の特徴は、垂直の壁を登ることができるという点です。体がしっとりしているため、胴体を壁面に貼り付けて壁を登り、ケージ上部から逃走できます。

体が平たいため、種によっては高さ1cm未満の隙間を通り抜けることも可能です。動きが遅く油断しがちですが、「いつの間にか脱走」の達人です。

両生類は、ケージから逃げると徐々に体の水分が抜け、最後は干からびて死んでしまいます。脱走の際のタイムリミットは爬虫類よりずっと短いのでより警戒が必要です。

このグループも、基本的には専用ケージでの飼育がおすすめです。観賞魚用の水槽を使用する場合は、蓋の隙間には特に注意して下さい。

エアーポンプやフィルターなどを利用する場合はチューブの穴から脱走することがあります。スポンジやグラスウールなどで隙間を埋めてしまうと良いでしょう。

爬虫類の脱走防止 5つのチェックポイント

以下に、爬虫類の脱走防止のためのチェック項目を5つ挙げてみました。みなさんの普段の飼育は大丈夫でしょうか?一度チェックしてみて下さい。

  • 生体をケージの外に出したまま目を離していませんか?
  • 蓋が開けっ放しになっていませんか?
  • ケージに生体が通れる隙間はありませんか?
  • 鍵のかけ忘れはありませんか?
  • 生体の力に対して、ケージの強度は十分ですか?

脱走されたらどうすればいい?

本来あってはならないことですが、万が一脱走されてしまった場合の対処方法をご紹介します。脱走の対処は大きく以下の四段階に分けることが可能です。

  1. 部屋から出ることを防ぐ
  2. 部屋の温度を上げる
  3. 隠れていそうな場所を探す
  4. 警察に届け出る

それぞれ何をすれば良いのか、詳細を確認しましょう。

①部屋から出ることを防ぐ

脱走からそう時間が経っていない場合、捜索範囲の拡大を防ぐために飼育部屋からの脱出を防ぎます。窓や扉は全て閉め、隙間がある場合はタオルなどを詰めて外に出られないようにしましょう。

②部屋の温度を上げる

次に、長期戦に備え、生体が体調を崩さないようエアコンなどで部屋の温度を上げます。

なお、両生類の脱走の場合は温度の上昇により死亡までのタイムリミットを縮めてしまう可能性があります。日頃の飼育環境を考えて温度・湿度を調整して下さい。

③隠れていそうな場所を探す

爬虫類の場合、出現しそうな場所にはある程度のパターンがあります。暖かい場所や餌、水を求めてひょっこり姿を現すかもしれません。具体的には以下のような場所をチェックしてみて下さい。

  • 電化製品の排熱が出る場所
  • 水道などの水回り
  • 家具の裏など、暗くて狭い場所
  • 餌昆虫ケージの近く

また、前回の給餌から期間が空いているようであれば、餌を使ってトラップを仕掛けてみると姿を現すかもしれません。

④警察に届け出る

ベランダに放している際の脱走など、屋外に逃げた場合は速やかに警察に届け出てください。運よく保護してもらえた場合でも、飼い主が見つからなければ殺処分されてしまう可能性もあるためです。

また、飼われていた動物にとって外の世界は厳しいものです。長期間飢えと寒さに晒され衰弱することも考えられます。捕獲後すぐに家に帰れるよう、警察への連絡は必ず行いましょう。

まとめ

爬虫類・両生類の脱走は時には命に関わる重大な問題です。しかし、飼育環境の工夫や、メンテナンス後のチェックを行うことで防止することができます。

脱走防止・対処のポイントを以下にまとめました。

  • 生体が脱走できる隙間をなくす
  • 個体のパワーや成長に応じたケージを用意する
  • フタの閉め忘れ・鍵のかけ忘れに注意する
  • 脱走された場合は冷静に対策を打つ
  • 屋外に脱走した場合は警察に連絡する

メンテナンス前後の目に付くところに、自分なりのチェック項目をまとめて掲示するのもおすすめです。手を洗う洗面所や、消毒液のボトルなどに貼っておくと良いでしょう。

脱走については、用心し過ぎるということはありません。一度生体の脱走対策を見直してみてはいかがでしょうか。