基礎知識

初心者でもわかる!野外採集の準備と注意点

春から秋にかけては、生き物たちの活動が活発になる季節。生き物好きの中には、野外採集(フィールドワーク)を計画している方もいるでしょう。ですが、採集に行くのが初めての場合、何をどうすればいいのか分からないかもしれません。

野山は楽しいところですが、同時に危険な生き物も生息しています。どんな生き物に会えるかも重要ですが、身を守るための知識も身につけておきたいですよね。

今回の記事では、生き物の採集に当たり、知っておきたい事前知識を取り上げます。

  • どんな生き物に会うことができるの?
  • 何を用意すればいいの?
  • どんなことに注意すればいい?

こんな疑問にお答えしていきます。

 

採集に行く時期

採集に行く時期としておすすめなのは、晩春から秋までの比較的暖かい季節です。冬場は生き物たちが冬眠していたり、卵の状態で寒さをやり過ごしている場合が多く、あまり姿を見ることができません。

 

採集で出会うことのできる生き物

採集に行くと、様々な生き物に出会うことができます。会える生き物は場所やシーズンによって違いますが、ここでは代表的ないくつかの種を紹介します。

カブトムシ クワガタムシなど各種昆虫

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野外採集の主人公と言えるのが、昆虫界のスーパースターであるカブトムシやクワガタムシなどの昆虫類です。雑木林では、真夏になると毎年のように愛好家たちが集い昆虫採集を行なっています。

その他にも、野山は

  • カマキリ
  • バッタ
  • コガネムシ

といった様々な昆虫たちが生息しています。

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カエル

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日本のカエルは種類が多く、その生息地も種によって様々です。森林や湿地、畑、渓流などで姿を見ることができます。

本州でよく見かけるのは

  • ニホンアマガエル
  • アカガエル
  • ヒキガエル
  • ウシガエル(特定外来生物)

など。

春の川や田んぼはおたまじゃくしの住処です。網ですくって観察してみるのも良いでしょう。なお、オタマジャクシは種の特定が難しく、飼育・輸送の制限されているウシガエルを誤って連れ帰る危険があります。自信がない場合は観察のみにするのがおすすめです。

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ヘビ

アオダイショウ - 初心者でもわかる!野外採集の準備と注意点

ヘビ類は、森林や田園地帯、河川敷でいくつかの種を見かけることがあります。

代表的なのは

  • アオダイショウ
  • シマヘビ
  • マムシ(毒蛇)
  • ヤマカガシ(毒蛇)

などです。

ヘビ類は素人が見ても種の特定が難しい生き物です。図鑑などの写真を見て確認は可能ですが、地域や生息エリアによって体色や模様の差が大きく、とくに幼蛇は判別は付きづらいのです。

自信がなければ捕獲は見送りましょう。また、捕獲する場合も自己責任で行なってください。

トカゲ

カナヘビ - 初心者でもわかる!野外採集の準備と注意点

日本のトカゲは、河川敷や森林、野原などに生息し、餌となる昆虫を追いかけて暮らしています。

本州に住むもので、よく見かけるのはニホントカゲとカナヘビの二種。動きが素早く捕まえるのはなかなか難しいので、捕獲できたら幸運です。

トカゲは地域によっては絶滅危惧種に指定され、捕獲を規制されている場合があります。以下のサイトから詳細を確認可能です。

日本のレッドデータ検索システム

こちらの記事ではニホントカゲ、カナヘビの飼育方法について解説しています。飼育を検討している場合は参考にしてください。

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イモリ・サンショウウオ

アカハライモリ - 初心者でもわかる!野外採集の準備と注意点

日本の水棲両生類の代表がイモリとサンショウウオです。

イモリの代表種であるアカハライモリは主に田んぼの水路や流れの少ない川などに生息しています。水が綺麗で淀みのあるところで見つかりやすいです。捕獲の際は網で優しくすくうか、水ごとすくい上げてください。毒があるので素手で触ったあとは必ず手を洗いましょう。

サンショウウオの捕獲は控え観察する程度にしておきましょう。サンショウウオは個体数が減少しており、ほとんどの種が準絶滅危惧種以上の指定を受けています。詳しくは以下を参照してください。

日本のレッドデータ検索システム|サンショウウオ科

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採集に行く際に用意するもの

次に、採集に行く際の準備について紹介します。庭の虫を捕まえる程度なら半袖半ズボン手ぶらでも良いですが、野山に入る場合はそうもいきませんよね。

採集に行く際、最低限必要な道具と服装をご紹介します。

服装

暑い夏だと虫取り少年スタイルで出かけがちですが、基本的に袖の短い服や短パンはNGです。雑木林は危険な生き物が多いです。刺されて傷だらけになることも考えられますので、肌の露出は極力避けてください。

靴は長靴がベストです。長靴は

  • 草木による足の切り傷を防げる
  • ヘビやヒルに噛まれにくくなる
  • 水たまりやぬかるみでも歩けるようになる

といった利点があります。さらに底がフェルトの長靴であれば滑りにくくなり、転倒による怪我の予防にも繋がります。

夏でも長袖・長ズボンで出かける。足を守るために長靴を履く。

補虫網

高いところにいる虫や、水棲生物をとるときに便利です。簡易的なものは100均でも販売していますが、壊れやすい上に収納時に場所を取るので、長く使うなら伸縮式のものを一本持っておくと便利です。

虫かご・プラケース・洗濯ネット

捕獲した生き物の一時保管や観察に使います。手が塞がらないよう、ストラップのついたものが良いでしょう。

洗濯ネットもカエルやヘビを安全に運ぶために使用できます。

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タオル

夏場の採集の必須のアイテムです。また、雑木林や森林での採集では首に巻いて使用してください。

山には血を吸うヒルがいます。服に入り込み血を吸いますので、侵入を防ぐために装着してください。

 

罠で昆虫を捕獲する

カブトムシやクワガタムシを捕まえる際、トラップを利用しているのを見かけたことはないでしょうか。
虫をおびき寄せて捕獲することができるため、今も多くの愛好家が罠を使用しています。ここでも代表的な二種をご紹介します。

ライトトラップ

夜行性の虫には光に集まる習性があります。カブトムシやクワガタムシもその例外ではなく、光を利用して捕獲することができます。

ただ、ライトトラップは機材が大きく、場所を取ります。また、虫を集めることになるので近隣に迷惑がかかる可能性もあり、気軽に設置できるものではありません。

おすすめは雑木林周辺の街灯を回ることです。条件が合えば、隠れていた昆虫たちが光に呼ばれて姿を現します。

餌で誘引するトラップ

バナナなどの果物を使って昆虫をおびき寄せる方法です。餌を吊るして、数時間後に寄ってきた昆虫を捕らえたり、脱出できないよう加工した容器の中に餌を入れて捕まえる方法などがあります。

ペットボトルやストッキングなど、家にあるもので簡単に作れることが多いので、やりやすいもので挑戦してください

 

 

採集に行くときの注意点

野外採集に行く前に、いくつか確認しておくべきことがあります。

「山に行って虫を取るだけじゃないの?」と思うかもしれませんが、環境とあなたの命を守るために必要な知識です。是非一通りチェックしてください。

注意すべき動物・昆虫

野山に住むのは採集対象のの生き物だけではありません。森や山には、毒を持っていたり、人間に襲いかかってくる生き物もいます。ごく一部ですが、代表的なものをご紹介します。

マムシ ヤマカガシ

マムシやヤマカガシは、非常に強い毒を持ったヘビです。咬傷が重症化すると命を落とす危険があります。

一番の対策は蛇に近寄らないことです。蛇は臆病な性格のものが多く、特にヤマカガシは自分から人を襲うことは少ないと考えられています。蛇を見つけてもなるべく近寄らないようにしましょう。

蛇の咬傷を防ぐために、厚手の長靴で肌を守りましょう。

参考:臆病な毒ヘビ ヤマカガシを知って!|NHK生活情報ブログ

参考:あなたがマムシに咬まれたら|一般社団法人 小郡三井医師会

ヒル

普段山に入らない人には馴染みがないかもしれませんが、野山には人の血を吸うヒルが生息しています。本州では、山や林に生息するヤマビルと、田んぼや沼でに生息するチスイビルなどが確認できます。

チスイビルの場合、水に肌をつけないことで対策できますが、ヤマビルは気づかない間に服に入り込んで肌に噛み付いていることがあります。大抵の場合服の裾や袖、襟元などから侵入しています。

ヤマビルの対策は侵入経路塞ぐことが有効です。ズボンの裾を靴下に入れてしまったり、袖を絞ることのできる上着の着用をお勧めします。

噛まれてしまった場合でも消毒用のアルコールをかけて対処できます。小さいスプレーなどに入れて携帯しておくと安心です。

マダニ

山に住む吸血性のダニの一種で、動物や人間の血を吸います。日本紅斑熱など感染症を媒介する生き物なので注意が必要です。

主な対処法はヒルと同じく肌を露出しないことです。万が一噛まれてしまった場合は皮膚科で除去してもらうようにします。

自分で除去できる場合もありますが、ダニは種類によって口吻の長さが異なるため、ダニの種類によっては頭部が皮膚の中に残ることも考えられます。ダニを除去できたと誤認して放置すると病原菌の感染リスクが高まりますので、自分で判断せず必ず病院に行くようにしましょう。

参考:皮膚に食い込んだマダニの除去法は?|公益社団法人 福岡県薬剤師会

スズメバチ

山に住む生き物の中で、最も警戒すべきものの一つはスズメバチです。スズメバチの毒が原因で、毎年のように死者がでています。

スズメバチは黒いものに反応して襲ってくる習性があるため、山に入るときは帽子をかぶるようにしましょう。

また、スズメバチは敵に対してアゴを鳴らして警戒音を出す習性があります。どこからともなく「カチカチ」と音が聞こえてきた場合、スズメバチの巣がある可能性があります。危険ですので、静かにその場を離れて下さい。

参考:森林レクリエーションでのスズメバチ刺傷事故を防ぐために|国立研究開発法人 森林総合研究所

クマ

クマは気付かずに接近したり子グマを連れている場合、自分や子供を守るために人間を攻撃することがあります。

一番のクマ対策は、熊と接近しないこと。クマの方から人間に気付けば逃げて行くことが多いです。熊の出没の可能性がある場所では、熊よけの鈴や携帯ラジオを身につけて音を出しながら行動すると効果的です。

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参考:ツキノワグマによる人身被害を防ぐために|長野県

参考 : 日本に生息する2種のクマ、ツキノワグマとヒグマについて

採集を行うときのマナー

採集をおこなう場所は、採集者だけのものではありません。最低限のマナーやルールを守って採集を行いましょう。具体的には以下の点に注意してください。

採集地は必ず元に戻す

採集を行なった後、フィールドは必ず元に戻します。ゴミやトラップの持ち帰りなどの基本的なマナーの他「元に戻せる範囲で採集を行う」ことも重要です。

樹皮を剥がして昆虫採集を行う方法がしばしば見られますが、木を傷めることになるので控えてください。また、掘った穴やひっくり返した石も必ず元に戻し、自然環境への影響を最小限に止めるよう努力しましょう。

立ち入りできる場所かどうか確認する

山自体が私有地で立ち入り禁止の可能性があります。農林業の仕事場になっているケースも考えられますので、立ち入り禁止でないか確認をとってから採集に出かけましょう。

生き物の乱獲は慎む

一度に数十匹など、非常識な乱獲はしないようにします。乱獲が続くと、個体数が減少してその場所から絶滅する危険もあります。たくさん取れると嬉しいものですが、個人で楽しむ以上の数は元いた場所に離して下さい。

特定外来生物・絶滅危惧種に注意

絶滅危惧種の捕獲と特定外来生物の輸送・飼育は禁止です。場合によっては刑事罰が課される可能性がありますので、注意が必要です。

特定外来生物と絶滅危惧種の指定生物は以下のサイトを参考にして下さい。

日本のレッドデータ検索システム
特定外来生物一覧|環境省

 

爬虫類・両生類の採取のコツ

闇雲に歩き回っても良いのですが、爬虫類や両生類に関しては採取のコツがあります。

ここでは採集の確率を上げるコツを2つ紹介します。

フンを手がかりにする

トカゲやヤモリは、生息場所の近くにフンをしていることがあります。

生体が見つけられない場合は、地面をよく観察してフンを手がかりに探してみるのも一つの方法です。

その動物の習性・習慣を考える

捕まえたい動物の習性を考えることで採取の確率を上げることができます

例えば爬虫類のトカゲであれば、体温をあげるために日光浴をする習性があります。その習性を利用し、日光浴を始める時間帯である朝方〜お昼まで探索をすると、素手で捕まえることが可能になります。

「昼行性か、夜行性か」「木の上にいるのか、地面の近くか」「乾燥気味の場所か、水辺か」など、動物の気持ちになって探索すると、生体に出会える確率を上げられます。

 

まとめ ルールを守って楽しく採集を

以上、野外採集の準備と注意についてご紹介しました。

「意外と約束ごとが多くて面倒くさい…」と思ってしまった方も居るかもしれません。ですが、自然の中にお邪魔する以上、環境に配慮して採集を行うことは非常に大切です。該当するところだけでもOKなので、出発前に見返してみて下さい。

他の採集者と重なった場合は譲り合いも必要です。マナーとルールを守って、楽しく遊んで下さい。

ライター:いちはら まきを
Twitter:@IchiharaMakiwo

 

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