飼育・生体

セイブシシバナヘビに噛まれた!毒の強さと対処法を徹底解説!

皆さんもご存知のように、セイブシシバナヘビは毒ヘビです。

  • 噛まれても大したことはない
  • ちょっと腫れるだけ

などと言われるのをよく聞きますが、飼育者の間でも情報が錯綜しており、詳しい情報はよく分からないのが現状です。

そこで今回の記事では、セイブシシバナヘビに噛まれたことを想定し、その対処法を徹底解説します。

  • セイブシシバナヘビに噛まれたらどうなるのか?
  • 噛まれたときはどう対処すればいいのか?
  • 何故噛むのか?ハンドリングはしない方がいい?

以上の内容を順に解説していきます。

シシバナヘビ - セイブシシバナヘビに噛まれた!毒の強さと対処法を徹底解説!

セイブシシバナヘビに噛まれることによる健康被害

日本で毒ヘビというとハブやマムシを思い浮かべる方が多いかと思います。これらのヘビは毒牙自体が注射針のようになっていおり、毒線から瞬時に大量の毒を注ぎ込むことで効率よく獲物を殺傷できる仕組みを持っています。
それに対してセイブシシバナヘビは、牙そのものではなく唾液に弱い神経毒を持っており、咬傷部分に唾液が入ることで間接的に毒を注入することが可能となっています。

いわゆる猛毒ヘビに比べると毒の注入量が少ない上、毒自体も弱いです。セイブシシバナヘビに噛まれ、咬傷それ自体で命を落とした、重篤な後遺症が残ったという過去の記録は見られませんでした。

しかし、弱毒とはいえセイブシシバナヘビは毒ヘビであり、噛まれるとある程度の健康被害が予想されます。具体的に、セイブシシバナヘビに噛まれるとどんな症状が出るのでしょうか。

噛まれた時の症状

シシバナヘビの毒による、考えられる主な症状は以下の通りです。

  • 咬傷部の腫れ
  • ズキズキとした痛みと強い痒み
  • 皮膚下の斑状出血
  • 紅斑(発疹のようにブツブツと腫れる)
  • 水疱の形成

一瞬噛まれた程度であれば腫れと痒み程度でおさまることが多いようですが、ヘビがなかなか離してくれず、長時間に渡って噛まれ続けた場合は上記のような皮膚の異常が現れ重症化する可能性があります。

参考: セイブシシバナヘビ咬傷の症例|Wiley Online Library

二次感染の危険性

セイブシシバナヘビに限らず、動物に噛まれたり引っ掻かれたりした場合、その傷から細菌が侵入し二次感染にかかる場合があります。今回は、セイブシシバナヘビに噛まれた場合に特に注意すべき二種類の感染症をご紹介します。

サルモネラ菌感染症

サルモネラ菌は食中毒の原因菌としておなじみの細菌ですね。通常生肉や生卵などを通して口から感染し、下痢や嘔吐などの消化器系にダメージを与える病原菌として有名です。

実はサルモネラ菌は爬虫類の多くが保有しており、ショップの生体の80%、家庭で飼育されている個体の32.2%から検出されたという記録もあります。とりわけヘビはサルモネラ保有率が高く、ショップの生体・飼育個体の90%がサルモネラ菌陽性だったという検査結果が存在しています。

サルモネラ菌が外傷から感染し体内で増殖すると、菌血症と呼ばれる症状を引き起こし、臓器や骨・関節などに炎症を起こします。その結果発熱・悪寒・各種器官の機能不全などを引き起こす可能性があり、非常に危険な病気であると言えます。

特に体調を崩している方・子供や高齢者・糖尿病やHIVなどで免疫が低下している方は重症化する危険性があります。

参考: 爬虫類とサルモネラ|栄研化学株式会社

参考: 菌血症|MSDマニュアル 家庭版

破傷風

破傷風は、土の中に多く存在する破傷風菌と呼ばれる細菌によって引き起こされる感染症です。第二次世界大戦中に猛威を振るった病で、80%と高い致死率を誇っていました。現在は予防接種の普及と治療法の確立により死者は減少していますが、それでも2000年には一年で92名が亡くなっている恐ろしい病です。

発症すると神経の働きが阻害され、開口障害・顔の筋肉の硬直などが見られ、病状が進むと体が痙攣するようといった症状も見られます。症状が心臓や呼吸器の筋肉に及ぶと最悪の場合死亡するケースもあります。

破傷風菌は土の中に広く存在する菌です。そのため土や砂系の床材を使っている方は要注意。特にメンテナンス中に噛まれてしまった場合は土を触った手で傷に直接触れることは避けましょう。

参考: 国立感染症研究所|破傷風とは

噛まれたときの対処方法

セイブシシバナヘビは性格も温厚で大人しく、人を噛むことは少ないと言われています。しかし何らかの理由でヘビを怖がらせてしまった場合や、食べ物と間違ってしまったときに噛まれてしまう事故はあるでしょう。
では、セイブシシバナヘビに噛まれたとき、どう対処すれば良いのでしょうか

噛み付いたシシバナヘビを引き離す方法

噛まれてしまった場合は取り敢えず離してもらわないといけません。弱毒とはいえ長い間噛まれたままだと重症化する恐れがあります。
ヘビが自分から離してくれるならそれで良いのですが、餌と間違って噛み付いた場合はそのまま締め付け飲み込もうとすることも。

噛み付いたヘビを強制的に引き離す方法はいくつかありますが、簡単な二種類をご紹介します

腕ごと水に浸ける

かわいそうな気もしますが、こちらも噛まれているので少し強引な方法です。バケツや水槽に水を張り、噛んでいるヘビの胴体を腕ごと水に浸けてしまいます。驚いて噛む力が弱まったら急いで顎から腕を抜きます。

カードで口をこじ開ける

水没作戦が失敗した場合は仕方ないので無理やり口をこじ開けます。ポイントカードやクレジットカードなど、固めのカードを腕と顎の隙間に差し込み、少しずつ力を入れてゆっくりと持ち上げます。この方法はヘビに怪我をさせてしまう可能性もありますので、自己責任の上慎重におこなうようにして下さい。

基本の応急処置は洗浄と消毒のみ

セイブシシバナヘビの咬傷の応急処置は以下の二種類。

  • 流水による洗浄
  • 傷口の消毒

毒ヘビの傷の応急処置というと、毒を吸い出したり、止血帯で毒の回りを抑えたりするイメージがあります。しかし、少なくともセイブシシバナヘビに噛まれた場合はそういった処置は不要です。洗浄と消毒のみおこない、基本的には傷に触れないようにしましょう

洗浄の際も、傷口を絞ったり揉んだりせず、汚れと菌を流すことだけに集中して下さい。

診察はなるべく大きな病院の外科へ

傷の悪化を防ぐため病院に行く場合、なるべく大きな総合病院を選ぶようにしましょう。診療科は外科です。
町の医院に行って、たまたまヘビ咬傷の診察経験がある先生が居ればいいですが、頻発する症例ではないため未経験の医師に当たることもあります。単純に確率の問題ですが、総合病院を選ぶ方が経験者に当たる確率は高いでしょう。

診察の際は、飼育しているヘビの写真をスマホで撮影して見てもらうと良いでしょう。

セイブシシバナヘビのハンドリングについて

毒を持っている以上、セイブシシバナヘビの素手でのハンドリングは避けるべきでしょう。噛み付いたヘビを強制的に引き離すのはヘビ自身にも負担を強いるものです。

メンテナンスや移動など、触れる必要がある場合は保護手袋の着用が推奨されます。手袋をしていれば噛まれても牙は深く刺さり辛いですし、手袋を脱いでしまえばヘビが口を離すまで放っておくこともできます。

セイブシシバナヘビに限らず、毒を持っている品種や気性の荒い個体を飼育している場合は一つ持っておきましょう。

まとめ セイブシシバナヘビと共に暮らすために

現在はSNSを経由し、ものすごい速さで情報が拡散されます。ヘビの取り扱いを間違って負傷してしまうと、知識のない人々の恐怖心をいたずらに煽ることになりかねません。
毒蛇としての悪評が広まれば飼育を規制されてしまう事態も考えられます。

愛好家が長く飼育を楽しむためにも、また大切な生体のためにも、爬虫類と人間の適切な距離感は必要不可欠です。

接し方と対策を知ってさえいれば、セイブシシバナヘビはとても愛らしく、良い相棒になり得る最高のヘビと言えるでしょう。いい関係で共に暮らすためにも、一度接し方を確認してみてはいかがでしょうか。

ライター:いちはら まきを

Twitter:https://twitter.com/IchiharaMakiwo