飼育・生体

爬虫類から病気が移る?サルモネラ感染症の症状と予防方法

皆さんは、サルモネラ菌と聞くと何を思い浮かべるでしょうか。サルモネラは汚染された食べ物を口にすることで食中毒を起こす菌として有名ですが、実は爬虫類の常在菌の一種です。

爬虫類との接し方を誤ったり、お世話のあとの手洗い・消毒を怠った場合に感染の危険があります。子供や高齢者など、免疫の低い人が感染すると重症化する可能性もあるため、決して油断できない感染症です。

今回の記事では、爬虫類から感染するサルモネラ感染症の症状と予防について解説します。

  • どんな症状がでるのか
  • どんな場合に感染するのか
  • どうすれば予防できるのか

こういった内容を紹介していきます。

爬虫類と暮らす上で、動物由来の感染症の勉強は避けて通れません。この機会に是非チェックしてください。

サルモネラ菌とは

サルモネラ菌は、動物由来感染症より食中毒の原因菌として有名な細菌です。日本で感染例が多いのは、生鮮食品が痛みやすくなる6月〜10月にかけての時期。食肉や卵などの食品に発生し、毎年病院に運ばれる人が出ます。

サルモネラ菌は食中毒の原因菌であることに加え、爬虫類の常在菌の一種です。爬虫類の生活水や糞からも検出されます。

サルモネラ感染症の感染経路

サルモネラ菌の代表的な感染経路は大きく分けて以下の二種類があります。

  • サルモネラ菌の発生した食品の口からの摂取
  • ペットを世話した手で食べ物や食器などを汚染してしまう

サルモネラ感染症の症状

サルモネラ菌感染症の代表的な症状は消化器系に出ます。

  • 嘔吐
  • 腹痛
  • 下痢

抵抗力の弱い子供や高齢者の場合は、意識障害や菌血症、脱水症状が見られることもあります。

参考:サルモネラ感染症とは|NIID国立感染症研究所

爬虫類からサルモネラ菌に感染する危険性

爬虫類がサルモネラ菌を保有しているといっても、その感染の危険性はどの程度のものなのでしょうか。実は、過去に爬虫類から人間にサルモネラ菌が感染した例は多く存在し、飼育者数が増えている現在も問題になっています。

過去に発生した症例をご紹介します。

爬虫類からサルモネラ菌に感染した事例

爬虫類からのサルモネラ感染症は多くの事例が報告されています。その中の二件をピックアップします。

ケース1
患者:6歳2ヶ月の女児
時と場所:2005年 千葉県船橋市の総合病院

嘔吐・発熱・下痢により緊急入院。入院時に38.5℃の発熱があり、軽度の肝機能の異常が見られました。便からサルモネラ菌が検出され、サルモネラ急性感染による腸炎と敗血症の診断が出ています。

この家ではミドリガメを飼育しており、飼育水を調査したところ便から検出されたものと同じ菌が見られました。

ケース2
患者:生後27日の男児
時と場所:2004年2月 千葉県内の病院

発熱・下痢・哺乳力の低下で入院したケース。便からサルモネラが検出されました。

乳児が入院する一年前からイグアナを飼育しており、食品や外部環境からの感染の可能性が薄かったため、イグアナに由来するものと推定されています。

事例参照元:ミドリガメ等のハ虫類を原因とするサルモネラ症発生事例に係る注意喚起について|厚生労働省健康局

爬虫類のサルモネラ保有率

爬虫類のサルモネラ菌保有率はどの程度なのでしょうか。

医学と公衆衛生の学術情報誌『モダンメディア』に、爬虫類のサルモネラ保有率に関する情報が掲載されていました。

飼育下の場合

ヘビ類:90%
カメ類:18%
トカゲ類:53.6%

と、とりわけヘビとトカゲにおいてサルモネラ保有率が高いという結果になっています。

  • 当記事の執筆時点ですでに14年前の研究であること
  • 検体数が少ない(蛇は10匹、トカゲは28匹)こと

以上の理由から必ずしも現状を反映しているとは限りませんが、飼育下の爬虫類でも、一定数がサルモネラに感染していることが分かります。

参照元:爬虫類とサルモネラ|『モダンメディア』 54 巻 6 号 2008[話題の感染症] 林谷秀樹:岩田剛敏:中臺文

サルモネラ感染症の予防

感染すると恐ろしいサルモネラ菌ですが、きちんと予防を行うことで感染を防ぐことができます。

サルモネラ菌は消毒液に対する耐性が低く、市販の消毒薬で消毒することができます。給餌や掃除のあとは、消毒薬での消毒を忘れないようにしましょう。

最も確実なのは、飼育生体のケージのそばや、爬虫類部屋に消毒液のボトルを設置しておくことです。メンテナンス後にさっと使用できるプッシュタイプやスプレータイプがおすすめです。

サルモネラ菌は爬虫類の生活水の中からも検出されることがあります。

  • 生体の飲み水
  • 水棲種の古い生活水

など、爬虫類の使った水はキッチンの流しや洗面所には捨てないように注意します。集めてトイレに流すのがおすすめです。

また、爬虫類とキスするなど、粘膜が接触する過剰なスキンシップは控えた方が良いでしょう。

参考:サルモネラ感染症|健栄製薬

まとめ 爬虫類から感染する危険はあるが予防が可能

以上、爬虫類が原因のサルモネラ感染症と予防についてご紹介しました。

ペット爬虫類の多くが保有しているサルモネラ菌。感染すると危険な菌ですが、手洗いと消毒を徹底することで予防が可能です。

爬虫類由来のサルモネラ感染症は、特に子供で重篤化の症例が見られます。小さな子供のいる場合は、爬虫類に接触させないこと、手指の消毒を徹底するなど対策が必要です。

日々注意して飼育を行うようにしましょう。

ライター:いちはら まきを
Twitter:@IchiharaMakiwo