飼育・生体

フトアゴヒゲトカゲの野生下の暮らしと生息環境

「大切な爬虫類には快適な生活を送って欲しい。」

飼育者なら誰しも抱いている願いですが、最適の飼育環境を作るのはなかなか難しいものです。

飼育環境作りを難しくしている原因はいくつか考えられますが、その一つは「情報が溢れていてどれが正しいのか分からない」ことです。

「結局どのやり方が正しいの?」
「自分の子にぴったりの飼育環境が分からない」

こんな悩みを抱えている方は少なくないでしょう。

爬虫類の飼育環境を作るにあたり、判断に迷った際の指標の一つが「野生下の飼育環境」です。野生動物である爬虫類の体は、本来の生息域に適応するようにできているからです。

どんな環境で暮らしているか知ることは、生体が健康に暮らせる環境作りの基準になりますので、飼育者なら知っておいて損はありません。

今回はペットリザードの代表種、フトアゴヒゲトカゲの生息環境についてご紹介します。

  • フトアゴヒゲトカゲの生息地はどんなところか
  • 温度と紫外線の強さはどのくらいか
  • 野生下の環境を作るためにどんなところを見直せばいいか

という内容をお届けします。

 

フトアゴヒゲトカゲの生息地はオーストラリア

フトアゴヒゲトカゲはオーストラリアの固有種で、オーストラリアの東部〜中部の乾燥地帯に生息しているトカゲです。

砂漠や低木地帯で活動していることが多く、しばしば現地の野生動物の一種として目撃されています。活動時間帯は主に日中ですが、気温が高く日差しの強過ぎる日は夕暮れ時まで活動することもあるようです。

普段は餌を探して徘徊したり、日向ぼっこをして体を温めたりして暮らしています。(参考:Central Bearded Dragon|Australian Museum)

 

フトアゴヒゲトカゲの生息地は紫外線が強く気温も高い

フトアゴヒゲトカゲの生息マップ - フトアゴヒゲトカゲの野生下の暮らしと生息環境

(画像出典: wikipedia フトアゴヒゲトカゲ)

フトアゴヒゲトカゲの故郷は比較的赤道に近く、強い日差しの差し込む地域です。

オーストラリアの国土は日本の20倍という広さなので、紫外線の強さや気温はかなりの地域差があります。フトアゴヒゲトカゲが多く生息しているのは、大陸の中央あたりです。

気温の参考として、ノーザンテリトリー州の日差しの強さと一年の気温とを観てみましょう。

フトアゴヒゲトカゲの生息地の日差しの強さ

フトアゴヒゲトカゲは、ペットリザードの中でも強い紫外線を必要とする種です。彼らの生息域の日差しの強さはどの程度でしょうか。

以下のグラフは、各地域の紫外線の強さをWHO(世界保健機関)が発表したものです。

オーストラリア ダーウィンの紫外線量 - フトアゴヒゲトカゲの野生下の暮らしと生息環境

日本の真夏と同じ程度か、それ以上の強さの紫外線が一年中降り注いでいることが分かります。

なお、元にしたデータはダーウィンという街のもの。ノーザンテリトリー州の中でもかなり赤道に近いエリアです。(参考:UV指数|WHO)

フトアゴヒゲトカゲの生息地であるオーストラリア中部〜東部はもう少し南に位置しています。そのため、今回まとめたデータよりは紫外線の弱い地域であると推測できます。

とはいえオーストラリアは日本の本州より気温の高く、それなりの紫外線の強さです。砂漠地帯だということもあり、年間を通して本州の夏と同程度の日差しが注ぐエリアだと思われます。

フトアゴヒゲトカゲの生息地の一年の気温

ノーザンテリトリーの月別気温と降水量 - フトアゴヒゲトカゲの野生下の暮らしと生息環境

これは、ノーザンテリトリー州のほぼ中央あたるテナントクリークの一年の気温をグラフにしたものです。

一年を通して日本より暖かい気候と言えます。なお、南半球に位置している国なので日本とは季節が逆です。

平均気温が最も低い6月でも、気温はおよそ13度〜26度程度と日本の秋口くらいの寒さです。なお、グラフのデータはあくまで日々の気温の平均値を月別まとめたもの。そのため13度を下回る日もあるでしょうが、10度以下になる日は少ないと考えられます。

反対に、最も気温の高い12月は、日本の真夏と同程度か、それ以上の暑さです。暑い日は40度を上回ることもあり猛暑と呼ぶに相応しい気温です。

乾燥地帯ですので雨は少ない気候になっています。最も雨量の多い1月の雨量がおよそ120mm程度。9月の東京の雨量が200mm程度ですので、日本と比べて雨は少ない地方です。(参考:テナントクリークの気温|気象庁 地点別データ・グラフ (世界の天候データツール(ClimatView 月統計値)))

 

フトアゴヒゲトカゲは雑食性

野生下の餌は

  • 昆虫
  • 植物の葉・果実・花
  • 自分より体の小さい小動物

など。

飼育下では野菜やコオロギなどを与えられることが多いですが、野生で暮らしている個体はアリや甲虫類、自分より体の小さいトカゲなども食べます。野生での厳しい環境を生き抜くため、飼育されている個体より口にする餌の種類は豊富です。

 

野生に近い環境を作るための四つのポイント

ここからは、フトアゴヒゲトカゲの飼育環境を野生ものに近づけるための見直しポイントをご紹介します。具体的には、以下の五つの方法があります。

  • 砂・土系の床材に変える
  • 立体活動の場を設ける
  • 飼育ケージ内に温度勾配をつける
  • 全身が入れる日陰を設ける
  • 広めのケージを使う

詳細を一つずつ見てみましょう。

砂・土系の床材に変える

ケージの底に砂や土を敷くことで、フトアゴヒゲトカゲが暮らしている砂漠環境の地面を再現できます。

爬虫類用の砂は見栄えもよく、生体が穴を掘ることでストレスの軽減を狙うこともできますので、床材選びに迷ったら使ってみてください。

誤飲による事故を減らすため、幼体の飼育にはペットシートを使用することをオススメします。

立体活動の場を設ける

野生のフトアゴヒゲトカゲは立体活動を好み、しばしば木やフェンスなど高いところに登ります。活き活きと立体活動をする姿が見られますので、大きめの流木や石などを入れてみましょう。

飼育ケージ内に温度勾配をつける

飼育ケージ内には温度勾配をつけるようにしましょう。

野生下のフトアゴヒゲトカゲも、一日中日向ぼっこをして暮らしている訳ではありません。体温が上がり過ぎないよう、暖かい場所と涼しい場所を移動しながら生活しています。

バスキングスポットは高めの温度(40℃)で、それ以外はやや低い温度(25℃)に設定すると、生体自身で体温調整ができるのでおすすめです。

広めのケージを使う

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フトアゴヒゲトカゲのケージは少し余裕のある広さのものをおすすめします。

野生下ではオーストラリアの広い大地を動き回って暮らしている生き物です。もちろん、飼育下で用意できる広さには限りがありますが、ある程度のスペースを確保したいところです。

具体的には、大人になるまでに90×45ほどのケージを用意しましょう。それより小さい60サイズや45サイズは、大人のフトアゴヒゲトカゲには少々狭いです。

岩や流木を多めに置いて立体活動の場を増やすのであれば120サイズでも広すぎるということはありません。生体のサイズや飼育スタイルとも相談して決定してください。

 

まとめ

以上、フトアゴヒゲトカゲの野生下の生息環境についてでした。飼育している生体の本来の生活を知るのは、飼育者にとって非常に有用です。興味をもたれた場合は、是非自分でも調べて見てください。以下、今回のまとめです。

  • フトアゴの生息地はオーストラリア
  • 気温が高く日差しも日本より強い
  • 飼育状況を見直し野生に近い環境を再現する

どんな飼育環境を作ればいいのか分からないとお悩みの方、今回の記事を参考にしてみてください。

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