基礎知識

ペット用でも危険!ピレスロイド系殺虫剤の爬虫類に対する影響

2019年も7月に入り、徐々に暑さを感じるようになりました。それに従ってこれからの季節で増えるのが、蚊やハエなどの虫たち。殺虫剤で一網打尽にしてしまいたいところですが、ちょっと待ってください。

実は、市販の殺虫剤には、「ペットにも安全」と記載のあるものであっても、爬虫類に悪影響のある商品が多く存在します。一体どういうことでしょうか?

今回の記事では、殺虫剤で多く利用される有効成分ピレスロイドと、ペット爬虫類への影響を取り上げます。

殺虫成分ピレスロイドとは?

ピレスロイドは、市販の殺虫剤のおよそ90%に使用されていると言われている殺虫成分の一種です。大きく分けると以下の二種類に分かれます。

  • シロバナムシヨケギク(除虫菊)から抽出される天然ピレスロイド
  • 天然ピレスロイドを模して開発された化合物

どちらも昆虫に対する殺虫効果・忌避効果に優れており、人間や哺乳類に対する毒性が低いことから、昔から多くの害虫対策製品に使用されています。

ピレスロイドが使用されている市販の製品は多く、以下のようなものが代表的です。

  • 蚊取り線香各種
  • 防虫剤
  • 虫除けスプレー
  • 殺虫スプレー
  • バルサンなど燻煙系殺虫剤
  • アースノーマットなど霧状殺虫剤

参考:KICHO ウルトラがいちゅう大百科|ピレスロイド の特徴は?

ピレスロイドは、爬虫類に対して強く作用する神経毒

ご紹介したとおり、ピレスロイドは哺乳類に対してはほとんど効果のない、選択毒性を持った薬剤です。しかし、その一方で、爬虫類や両生類には強く作用する神経毒でもあります。

爬虫類の体内にピレスロイドが侵入すると、体の麻痺・痙攣を起こし、重症の場合は死亡する危険性もあります。ピレスロイド系の害虫対策グッズの使用は、基本的には爬虫類には危険性が高いのです。

「ペットにも安全」イコール爬虫類にも安全とは限らない

殺虫剤には、人間やペットに対する安全性をアピールしたものが多くあります。ですが、「ペットにも安全」のペットには、多くの場合爬虫類を始めとしたエキゾチックアニマルは含まれません。犬用蚊取り線香など、ペット用の害虫グッズであっても、爬虫類に対しては強い毒性を持つものが多いのが事実です。

では、爬虫類への影響に対する防虫グッズメーカーの見解はどうでしょうか?

ピレスロイド系殺虫剤は爬虫類に対してリスクが大きい

今回の記事を執筆するにあたり、アース製薬に対して、ピレスロイド系殺虫剤の爬虫類への影響についてメールで問い合わせを行いました。回答は以下のとおりです。

「アース渦巻香」や「アースノーマット」などは、家庭内で使用することを考慮し、有効成分には人やほ乳動物、鳥類に対し安全性の高いピレスロイド系の殺虫剤を使用しております。
しかし、この成分は、爬虫類に対しては影響を与える可能性があります。爬虫類を飼われている部屋では、使用をお勧めできません。

アース製薬の製品においては、爬虫類への悪影響について個別に検査・試験を実施しているわけではなく、メーカーとしてはどの程度影響があるかは把握していないとのことです。あくまで危険性が不明であるため、リスク回避のため使用は控えて欲しいという回答でした。

そのほか、蚊取り線香などのメーカーとして有名なKINCHOは、金鳥の渦巻(蚊取り線香)の製品Q&Aにて、以下のように回答しています。

Q.昆虫や観賞魚がいる部屋で使用しても大丈夫ですか?

A.カブトムシやスズムシなど、昆虫を飼育しているお部屋では使用しないで下さい。
昆虫以外にも、魚類(熱帯魚や金魚など)、両生類、爬虫類などを飼育しているお部屋でも使用しないで下さい。

このことからも分かるように、ピレスロイド系の殺虫剤は、爬虫類への影響を明記している・していないに関わらず使用を控えるのが安全です。

参考:KINCHO|製品Q&A 金鳥の渦巻(蚊取り線香)

バルサンなど、燻煙型殺虫剤の使用について

殺虫剤の中には、バルサンやアースレッドといった燻煙型の製品があります。このタイプは、広い範囲を殺虫成分を含んだ煙で満たし、家中の害虫を根こそぎ駆除することを目的として開発されています。

その性質上、非常に強い噴射力と広い有効範囲を備えていて、同じ家屋の中であれば、別室であっても煙が漏れてくるほどです。事実、燻煙系殺虫剤の使用中は外出が推奨されています。

ここからも分かるように、燻煙型殺虫剤の使用は、別室にケージを置いていても安全ではありません。同じ建物での使用は控えた方が良いでしょう。マンションやアパートなど、集合住宅に居住している場合も注意が必要です。

参考:バルサン|よくある質問 バルサンの使い方は?

ピレスロイドの影響は不明点が多い 危険回避のため使用は控える

以上、ピレスロイド系害虫対策グッズの爬虫類への影響を紹介しました。

エキゾチックアニマルの飼育はまださほど世間に浸透していないこともあり、害虫対策グッズのメーカーも爬虫類・両生類への影響は明記していないことが多いです。各社の対応を待ちたいところですが、現状は飼育者個人が注意を払い、生体の安全を確保するしかないのが現状です。

製品によって有効範囲や薬剤の強さに差があると推測されますが、それがどの程度になるのかデータも公表されていません。大切な生体への危険性を排除するため、殺虫剤・防虫グッズの使用は極力控えるのが良いでしょう。

ライター:いちはらまきを
Twitter:@IchiharaMakiwo