キノボリトカゲという爬虫類をご存知でしょうか?
沖縄県以外の地域に住んでいる人にとっては馴染みの薄いトカゲだと思いますが、沖縄県などに生息するトカゲで、日本固有の種類も存在する爬虫類です。
爬虫類の飼育に興味のある方は、是非この記事を参考にキノボリトカゲの飼育にチャレンジしてみてください。
目次
1.キノボリトカゲとは(生息地、生態、寿命など)
出所)https://pz-garden.stardust31.com/hacyuurui/tokage/agama/okinawa-kinobori.html
キノボリトカゲはアガマ科に属するトカゲの一種です。ちなみに日本に唯一生息するアガマ科になります。アガマ科で代表的な種類と言えばフトアゴヒゲトカゲなどが挙げられるでしょうか。
分布
キノボリトカゲの仲間は、日本と台湾に分布していて幾つかの亜種に別けられます。
・オキナワキノボリトカゲ:奄美大島・喜界島などの奄美群島、阿嘉島・沖縄島・久米島・座間味島・津堅島などの沖縄諸島に生息しています。
・ヨナグニキノボリトカゲ:与那国諸島に生息しています。
・サキシマキノボリトカゲ:石垣島、伊良部島、西表島、小浜島、宮古島などに生息しています。
・スウィンホーキノボリトカゲ:台湾に生息しています。当種は日本では2016年8月に特定外来生物に指定(2016年10月施行)され、飼養・保管・運搬・放出・輸入などが規制されています。
オキナワキノボリトカゲは「国内外来種」と呼ばれており、進入経路などは不明ですが、宮崎県や鹿児島、静岡県などに移入定着していて、在来のトカゲ類との競合や生態系への影響が懸念されています。九州に定着したオキナワキノボリトカゲは重点対策外来種に指定されています (環境省, 2015)。
生態
オキナワキノボリトカゲは、森林や山地などに生息しているが、集落の近くにも生息していて、人家の庭先で見られることもあるそうです。
主として樹上性で、雄は樹木の高いところ、雌や子どもは、それよりもやや低いところで見られ、棲み分けしている様子が観察されるようです。
大きさ
オキナワキノボリトカゲは最大でオスは31cm(頭胴長9.3cm)、メスは24cm(頭胴長7.7cm)の大きさです。
尻尾が長く、見た目ではかなり小さいトカゲの部類になるでしょうか。
サキシマキノボリトカゲは全長はオスで27 cm、メスで20 cmに達します。
性格
小さなトカゲなので、神経質な傾向にあります。ただ、掴めば噛みつきますが、凶暴性はなく危険な生き物ではありません。
寿命
飼育下での寿命は5年ほどと言われています。
2.沖縄におけるキノボリトカゲの状況は?
オキナワキノボリトカゲの生息数は減少していて、環境省のレッドリストでは絶滅危惧種(VU)に指定されています。定量的な研究はないものの本種の生息密度の低さの要因として、開発に伴う生息地の減少や、外来の捕食者(ニホンイタチやインドクジャク)による捕食の影響が強く疑われています。
3.キノボリトカゲを購入しよう(オキナワキノボリトカゲの販売)
販売されている場所
・総合ペットショップ
・ホームセンター
・爬虫類専門店
・爬虫類イベント
総合ペットショップには爬虫類コーナーがあるところが多く、飼育用品や餌も販売されています。ただキノボリトカゲはメジャーな種類ではないため、販売されているかどうか事前に聞いておく方がいいかもしれません。
ホームセンターでも近年では爬虫類を販売しているところが増えています。しかし店員さんが爬虫類に詳しいかどうか、また飼育用品が充実しているかどうかはお店によるところです。ペットショップと比べると取り扱っている種類は少ないかもしれません。
初心者の方は爬虫類専門店で買うのをおすすめします。飼育に詳しい店員さんがいて飼育用品も揃ってあるので安心して購入できます。ただ、国産種に強い専門店でなければ販売していない可能性が高いです。事前に確認しておくことを推奨します。
爬虫類イベントでは多様な店舗から気に入った個体を購入することができます。イベントで購入する場合は、事前に飼育用品を揃えてセットしておくべきです。また混雑している場合は店員さんに話しかけづらいなどの心配点があります。
価格
キノボリトカゲの価格は平均約5,000円~1万円ほどです。
4.キノボリトカゲの飼育に必要なもの
ここからはキノボリトカゲの飼育に必要なアイテムを紹介していきます。
できれば生体を迎える前に揃えてセットしておくと、お迎え当日スムーズに家に連れて帰ることができます。
以下のものが飼育に必要になります。
・ケージ
・枝などの登れるもの
・水やり用ドリッパー
・床材
・バスキングライト、紫外線ライト
ケージ
キノボリトカゲは樹上性なので、高さのあるケージを選びましょう。
高さは45cmほどあると十分に終生飼育することができます。
グラステラリウムのような爬虫類用の飼育ケージで問題ないと思います。
枝などの登れるもの
枝を入れてキノボリトカゲが登れる場所をたくさん作りましょう。森林に生息する小型のトカゲですので、隠れるところがあってストレスを感じない環境を作ってあげることが重要です。
爬虫類用品としてワイヤーが入っていて自由に曲げることができるこちらの商品もおすすめです。
観葉植物などを入れてもいいでしょう。100円均一で販売されている人工植物でも問題ないので、登ることができ、さらに体を隠せる植物があるとキノボリトカゲは安心します。
水やり用ドリッパー
キノボリトカゲは水入れに水を張っていても水の存在に気づかないことが多いです。
樹上性のトカゲにはありがちですが、水入れにある水を認識できないんですね。それは彼らが普段上から落ちてくる雨水や葉についた水滴を飲むからだと推測できます。
なので、水をケージの上部から落としてあげることが必要になります。そこで活躍するのがドリッパーです。水量を自由に調節できるこちらの商品がとても使いやすいです。
水入れから水を飲んでいる姿が見られなければ、ケージの内側に霧吹きしてあげましょう。
垂れてくるしずくや植物の葉について水滴をペロペロと舐めてくれると思います。
また、スポイドで水を顔に垂らしてあげて飲ませることも可能です。頭に水がかかったことで水を認識して舐めてくれます。
床材
湿度を保ちやすい素材のものがいいです。
床材には以下のようなものがよく使われています。
ヤシガラ | 保湿性が高く見た目もいいです。燃えるごみとして出せるのもメリットです。 |
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爬虫類用ソイル | 保湿性が高く、バクテリアが繁殖してフンなどを分解してくれます。生体が良く湿ったソイルを踏んだあとケージ内が汚れてしまうことがあります。 |
ミズゴケ | 保水力や弾力性があります。前面に敷く場合は濡らしすぎなどに注意しましょう。 |
バークチップ | 園芸用で安く販売されており湿度や温度を保ってくれます。見た目も美しいです。 |
キッチンペーパーやペットシーツなどの紙類 | 見栄えを気にしなければコストがかからず汚れたら頻繁に交換でき、床材として使えます。保湿性が低く、成体の誤飲の危険もあるのでよく観察しましょう。 |
ヤシガラはキノボリトカゲにとって重要な湿度を保つことができ、見た目も自然な雰囲気で特におすすめです。
爬虫類用品として販売されているものは生体の安全を考えて作られています。
バスキングライト、紫外線ライト
キノボリトカゲの適温は約25~30℃です。
沖縄などに生息するということから分かる通り、暖かい温度を望む爬虫類です。
ただ、温度に関しては高低差があり、自由にキノボリトカゲが移動できる環境を作ってあげることが重要です。なので、飼育ケージの一部にバスキングライトを照射することで、その部分だけ他より少し暖かいという環境を作り出すことができます。
ただし、夏場は締め切った部屋だと室温が30℃を超える場合があり危険です。
クーラーで温度管理するのが1番です。
またキノボリトカゲは紫外線を必要とします。極端に強いものは必要ありませんが、紫外線ライトを照射するようにしましょう。また、暖かい日は定期的に日光浴をさせるということも良いです。
5.初心者でもキノボリトカゲは飼育できる?
出所)https://from-scratch.ocnk.net/product/3158
爬虫類として決して飼育が難しい種類ではないです。ただし、野生下では昆虫や蜘蛛を食べていることから、生きた餌を与えることが必要になります。その点が問題なければ特別な苦労はなく初心者でも飼育できると思います。
餌、サプリメント
キノボリトカゲは動くものに反応して食べる性質があります。なので基本的には与える餌は生きた昆虫となります。
・デュビア
・ミルワーム
などを与えます。
どれもペットショップなどで手に入ります。
目安としては成体には2〜3日に1度、幼体には毎日餌を与えることがおすすめです。ただし、個体によってどれだけ食べるかは差がありますので様子を見ながら与えるようにしてください。
また昆虫や人工飼料だけでは不足しがちなカルシウムやビタミンはサプリメントで補いましょう。
爬虫類用のサプリメントを昆虫にまぶしたり、人工飼料につけて与えるだけです。
特にベビーの時期は毎日添加してあげてください。
あまり生きた昆虫を扱いたくない、という方は冷凍コオロギや乾燥コオロギを与えるということも出来なくはないです。ただし、最初は生きたコオロギをピンセットで与えて、ピンセットに摘まれているもの=餌と認識させた上で冷凍コオロギや乾燥コオロギをピンセットで摘んで与えるといった努力が必要になります。
また、好みの餌があって偏食傾向にある個体などもいます。複数の餌をストックして日によって変えてみる、といったこともおすすめです。
温度と湿度
キノボリトカゲの適温は約25~30℃です。
寒すぎる、暑すぎると食欲が落ちて病気の原因にもなります。
また暖かい島にいた生き物だから暑さには強いのだろうと考えてはいけません。
真夏の気温は森の中に生息するキノボリトカゲにとっては暑すぎます。
ケージ内には温度計を入れて適温を保てているか毎日チェックしましょう。
ハンドリング
キノボリトカゲは小さく神経質なためハンドリングは少し難しいかもしれません。
ただ、日頃ハンドリングに慣れておけばケージ内の掃除や体調の確認など、ストレスを与えることなく触れることができるので是非練習しておきましょう。
ハンドリングする際には生体を驚かせないよう優しく掴み、落ちないように手に乗せてください。
もし手の上から移動するようであれば無理に止めず落ちないよう自分も動きに合わせましょう。
ハンドリングは長時間を避け、生体の様子をよく見ながら行いましょう。
繁殖
キノボリトカゲの飼育に慣れてきたら、繁殖にチャレンジしてみるのもいいでしょう。
オスとメスの相性がよければ産卵してくれます。もしオスとメスを一緒にして喧嘩をするようであればすぐに離しましょう。
6 – 8月ごろが産卵期で、メスはこの間に1 – 2回産卵を行います。一度に1 – 3個の卵を産みます。
また、孵化後にはベビーが食べられるような小さなコオロギなどを用意しておきましょう。
繁殖をさせる場合には生まれたベビーを飼育するのか、またどこかに譲るのかを決めておくなど計画的に行いましょう。
ただ、産まれた個体を外に逃すことは絶対にやめましょう。「国内外来種」として問題になっている地域がある通り、国内の非生息地において移入・定着していることが問題となっているトカゲです。沖縄などに生息することから暖かい地域でなければ越冬は不可能と考えられていましたが、静岡県など、最低気温が氷点下になる地域でも越冬・繁殖していることが確認されています。
一度国内外来種となってしまうと、原産地と異なる細菌やウィルス、寄生虫の感染の恐れがあるため原産地に戻すことはできません。
必ず繁殖した場合は責任を持って管理するようにしてください。
6.キノボリトカゲを飼ってみよう
出所)https://karapaia.com/archives/51548678.html
一見繊細で気難しそうなキノボリトカゲですが、適切な飼育環境を用意してあげ、適切な管理をしてあげればそれほど飼育困難な種類ではないです。重要なのは温度と水分、そして餌を適量与えることです。特に水不足になると体調を崩すのと湿度が高すぎるのも問題になるのでその点だけ様子を見ながら管理してもらえればと思います。
当記事が飼育を考えている方の参考になりましたら幸いです。
また、以下の記事も参考にしてみてください。